特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅳ.代謝的に作用する薬物
プロテインキナーゼC
森下 茂
1
Shigeru Morishita
1
1川崎医科大学精神科学教室
pp.496-498
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901649
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蛋白質リン酸化酵素プロテインキナーゼC(PKC)は,種々の細胞の生理機能に深く関わっている。これらの機能解明のためのPKC研究に,PKCの生理的かつ強力な阻害剤やPKC活性化物質が,簡便かつ有効な手段となっている。
酵素研究において,阻害剤は有効な手段であるが,その重要な条件として,目的とする酵素の特異的かつ強力な阻害物質であることが望まれる。PKCはcDNAの解析から,C末端側の触媒領域とN末端側の制御領域に分けられる。触媒領域は他のプロテインキナーゼと高い相同性を示し,ATP基質の結合部位を有し,特にATP結合部位は相同性が高いことが知られている。したがって,触媒領域に作用する阻害剤は他のプロテインキナーゼも阻害し,特異性が低いと考えられる。またATPと拮抗して阻害する物質は,ATPの濃度にも影響を受ける。その他,触媒領域には基質の結合部位も存在することが知られている。一方,制御領域はPKCに特異的で,Ca2+,リン脂質,DG/TPAの結合部位を有する。制御領域はPKCに特異的な領域であるため,この領域に作用する阻害剤は,特異性の面で優れていると考えられる。しかし,触媒領域に作用するものの,特異性が高い阻害剤もある一方,制御領域に作用するものの,阻害活性の弱いものもあり,実験系に使用するためには,工夫が必要となる。
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