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I.はじめに
さまざまな生理活性物質が細胞に作用すると,その受容体やイオンチャネルを介して,それらの情報は細胞内へと伝えられる。この細胞内シグナル伝達の道筋として,cAMPを経る路,Ca2+イオンを経る路,ジアシルグリセロール(DG)やアラキドン酸のようなリン脂質代謝生成物を経る路など,セカンドメッセンジャーによって制御される主要な経路が明瞭に提示されてきた。イノシトールリン脂質シグナル系では,1つの受容体刺激がGタンパク質を介してホスホリパーゼC(PLC)に伝えられ,細胞膜の成分であるイノシトールリン脂質を分解することによって,DGとイノシトール-3燐酸(IP3)の2つのセカンドメッセンジャーが同時に産生される1,2)。IP3は,細胞内カルシウムストアに作用して細胞内Ca2+濃度を上昇させ,DGはCa2+とリン脂質の存在下でプロテインキナーゼC(PKC)を活性化させる2,3)。Ca2+の働きの一つとして,Ca2+/カルモジュリン依存性キナーゼ(CaMK)が活性化される。これらプロテインキナーゼは数多くの酵素,イオンチャネルや受容体などの機能タンパク質,細胞骨格タンパク質や核タンパク質などのセリン,トレオニン残基をリン酸化する。こうしてイノシトールリン脂質シグナル系は,分泌のような細胞の一過性応答や筋収縮のような迅速的な応答のみならず,記憶,増殖,分化,癌化など,持続性の応答にもその引き金の主役を演じている。
Receptor mediated hydrolysis of phosphatidylinositol is a common mechanism involved in transmembrane signalling through which inositol 1, 4, 5-triphosphate (IP3) and diacylglycerol (DG) are generated in the cell. Both of these products of phospholipid metabolism have intracellular second messenger functions with DG formation leading to activation of protein kinase C (PKC) and IP3 stimulating Ca2+ release from intracellular stores in the endoplasmic reticulum, thus initiating the reactions that change biochemical state in the cell.
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