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I.はじめに
トランスジェニックマウスとは,外部から特定の遺伝子を受精卵に注入することにより,新しい遺伝形質を獲得させたネズミのことである6)。医学領域では,種々の疾患モデルの作製や個体レベルにおける遺伝子機能の解析などに利用されている。またウイルス学研究においても,このマウス作製がさかんに行なわれている。トランスジェニックマウスを用いることにより,本来ヒトやサルなど特定の動物にしか感染しないある種のウイルスがマウス個体で解析可能となり,疾病発病のメカニズムやウイルス遺伝子の機能に関する研究が飛躍的に発展してきている。
しかし,ウイルス遺伝子導入トランスジェニックマウスは,自然感染の例と病態が異なってくることに留意する必要がある11)。多くの感染ウイルスの宿主域はウイルスに対するレセプターを有するか否かによって決定されるが,トランスジェニックマウスの場合,受精卵に直接遺伝子を導入するため,レセプターとは無関係に発現され,さらに全組織の細胞にウイルス遺伝子が挿入されているため,遺伝子発現の組織特異性は組織内の細胞にのみ左右されることになる。また自然感染による発病の場合,生体の免疫反応が病因となることが多いが,トランスジェニックマウスでは導入された遺伝子が胎仔のときより発現する例が多いため,宿主はウイルスに対して免疫寛容の状態になり,免疫反応を伴わないことがあるのが特徴とされている11)。
Human T-lymphotropic virus type I (HTLV-I) is the suspected etiologic agent of adult T cell leukemia and the neurological disorder, HTLV-I-associated myelopathy/tropical spastic paraparesis. The search for the virus component mediating transformation has focussed on the tax gene, whose products not only stimulate viral transcription and replication but also trans-activate transcription of several cellular genes. To directly examine the pathological effects of the tax gene in vivo, transgenic mice expressing the tax gene under control of the HTLV-I long terminal repeat (LTR) promoter were produced.
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