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特集 視覚系の機能分化
視覚系の機能分化に関する最近の研究
Recent advances in research on functional differentiation of visual system.
酒田 英夫
1
Hideo SAKATA
1
1日本大学医学部第一生理学教室
1Department of Physiology, Nihon University School of Medicine
pp.339-340
発行日 1991年6月10日
Published Date 1991/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900135
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- Abstract 文献概要
視覚が色,形,運動,奥行きなどいくつかのカテゴリーの知覚に分かれることは,日常の経験からだれでもよく知っている。また,それぞれの知覚について古くから心理物理学的な研究が積み重ねられてきた。このような知覚のカテゴリーに対応するような機能分化は,既に網膜のレベルからみられる。光を受容する視細胞には杆体と錐体の区分があり,錐体には3原色に対応する3種類のスペクトル特性のものがある11)。そればかりでなく,視神経を出す神経節細胞に大型のY細胞(α細胞)と中型のX細胞(β細胞),小型のW細胞(γ細胞)があって,それぞれ違う機能を持っていることも,1970年頃から次第に明らかになった(田内・福田論文参照)。また,双極細胞や水平細胞には反対色性のものがあり(立花論文参照),アマクリン細胞にもいろいろ機能の違うものがみつかっている。
一方,脳の中に複数の視覚系があるという考えは,Trevarthen(1968)12)が2つの視覚系をいいだしたころに始まる。彼は,初め分離脳の実験から,大脳皮質と皮質下の違いに注目した。視覚野は主に視野中心部からの入力を受けて物体の識別に関係し,皮質下の上丘や視蓋前域は周辺視野をカバーして空間の知覚に関係するという仮説である。これはその後,膝状体外視覚系が意識にのぼらないさまざまな機能に関係するという考えに発展した(小川および筒井論文参照)。
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