トピックス 耳鼻咽喉科医のための甲状腺疾患
甲状腺分化癌に関する最近の話題
村上 泰
1
1京都府立医科大学耳鼻咽喉科
pp.451-455
発行日 1991年6月20日
Published Date 1991/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900296
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はじめに
甲状腺癌の大多数を占める分化癌は,自然史的にみれば非常に経過の長いslow growingな癌であるが,20〜30年という長い目でみればhighly malignantで,頸部リンパ節転移頻度も遠隔(肺,骨)転移頻度も高率であり,気道浸潤を生じてQuality of Lifeを阻害し,結局予後不良となりうる危険性をもっている。“おとなしい癌”という表現はわれわれ医師が勝手に用いているだけで,これに長期間悩まされ続ける患者の身になってみれば,まことに不適当である。“いい加減”な手術でも術創はきれいに治癒するし,5年くらいは全く問題なく経過するのが常であるから,この程度の“短期的”治療成果を云々することは意味がない。15〜20年後の成績改善へ向けてもっとはるかに遠視眼的に見直してみる必要が生じたことを出発点として,視点を変えた統計処理がなされ,基礎臨床両面から検討し直された結果,いくつかの問題点が浮き彫りにされてきている。
ここでは詳しい理論は述べない。日常臨床で甲状腺癌を取り扱うしでの実地に即した問題点のいくつかを拾って現代に即した解説を試みることとする。
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