Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
脳賦活―血流増加のカップリングを原理とした,新しい脳機能計測の手法である機能的近赤外分光法(fNIRS)をまとめた。この手法は,生体透過性の高い近赤外光を用いて,外部から脳活動に使う血流変動を追跡し得るもので,多チャンネル記録から画像化も可能である。しかしながら,生体の持つ強い光散乱により,一般的な定量化はできない。この問題を解決するため,時間分解計測法による絶対値計測が導入され,画像化の道を拓いた。
本稿では,このfNIRSの基礎原理,問題点,その解決法をまとめ,特に,光路長の問題を議論した。光計測法の持つ利点を生かし,ここで述べた問題点を克服することにより,脳機能解明の有力なツールとなり得る。
はじめに
脳賦活に伴う局所血流増加の現象は,血行動態の変動に基づく脳機能画像化の道を拓いてきた。機能的近赤外分光法―fNIRSはこの原理に基づくもので,1993年,筆者らを含む3つのグループから脳活動に伴う血流変動を,外部より近赤外光を用いて検出した報告より始まった1-3)。その後,この手法は脳機能解明のモダリティーの1つとして注目を集めつつある。しかしながら,その計測原理の発見からわずか10年しかたっておらず,その間多くの問題点も解明されないまま,安易な製品化と応用が行われ,その結果,いくつかの疑問も出されている。本稿では,このfNIRSの持つ問題点を整理し,その解決法をまとめたい。幸いなことに,筆者らが指摘してきた問題点を克服した装置もようやく市販されるようになり,その限界も見極めた上でfNIRSの広い脳科学への応用が期待される。
The optical technique of functional near-infrared spectrophotometry(fNIRS)is described, which is based on the excitation-flow coupling of brain tissue. The principle of fNIRS is discussed in this review with the emphasis on the required optical pathlength. For functional imaging, the methods for overcoming the various difficulties are proposed. The advantage of fNIRS is summarized, that the subjects can move freely under normal living conditions.
Finally, the feasibility and limitations of fNIRS are given.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.