連載 臨床医のためのワンテーマ腫瘍病理[5]
陰陽師よりも、オンコロジスト
市原 真
1
1札幌厚生病院病理診断科
pp.102-103
発行日 2017年2月15日
Published Date 2017/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200166
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熱心な腫瘍専門家のなかには、腫瘍を扱うために病理のことも知っておこうと一念発起され、病理学の教科書をどんどん読み進めていく方がいらっしゃいます。ところが、教科書に書いている内容の大半は専門用語が飛び交っていて、まるで異国の言葉のようですし、ちっとも臨床像との関連がみえてこないし、ああ、このままブラックボックスの中で病理医にまかせちゃったほうがいいなあと、心折れた方も少なくないと聞きます。
がんと腺腫の違いをどう判定するか。がんのなかでも、腺がんとはどのような所見をもつのか。扁平上皮がんと腺がんはどう違うのか。原発臓器の違いによって、細胞の見え方は変わるのか。大腸原発なら、肺原発なら、膵臓原発なら、核はどう見えて、細胞質はどのように見えるのか。粘液の含有量はどうか。ゴルジ野が不明瞭化してはいないか。核小体がやけに好酸性なときはなにを考えるか。見れば見るほど、がん細胞は多彩です。同じ人間がひとりとしていないのと同様に、同じ腫瘍というのも実は存在しないのかもしれません。
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