ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・1【新連載】
「死んだら終わり」じゃありません!
森田 沙斗武
1
1大阪はびきの医療センター 臨床法制研究室
pp.480-484
発行日 2023年4月15日
Published Date 2023/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204250
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Case
患者:80歳、男性
既往歴:高血圧、2型糖尿病
病歴:以前から生活習慣病に対してかかりつけ医で治療されており、おおむねコントロール良好であった。ADLも自立しており、夫婦2人暮らしで介護サービスなども受けていなかった。今回、発熱を契機に外来受診され、胸部X線で肺炎を疑う陰影を認め、緊急入院となった。
発熱を認めるも呼吸状態が安定していることからモニター装着などは行わず、入院1日目から抗菌薬を開始。喀痰検査などで菌は検出されず、起因菌は同定できなかったが、速やかに解熱し全身状態が改善したことから、退院の検討を行っていた。入院5日目朝に訪室したところ、ベッド上で心肺停止となっているのを発見し、救急救命処置を行うも蘇生しなかった。病棟に不審者の出入りはなく、他者の介入も疑われなかった。高齢であることから、死因を「虚血性心疾患」として死亡診断書を作成した。
妻に説明を行い、いったんは納得され死亡退院となったが、後日改めて息子夫婦が来院し、「納得できない」「入院中の投薬や管理不十分が原因の医療事故ではないか」と激怒された。弁明するも、明確な根拠を提示できないため、押し問答となった。遺族が弁護士に相談するも、最終的に医療訴訟には発展しなかったが、後味の悪いものとなった。
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