特集 日常診療に潜む「処方カスケード」—その症状、薬のせいではないですか?
【各論】
⓬下痢—下痢の原因にARBも!
中野 弘康
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1社会医療法人財団互恵会 大船中央病院 内科
キーワード:
慢性下痢
,
高血圧
,
ARB
,
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
,
処方カスケード
Keyword:
慢性下痢
,
高血圧
,
ARB
,
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
,
処方カスケード
pp.1228-1231
発行日 2022年10月15日
Published Date 2022/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429203975
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日常診療において下痢はcommonである。“下痢を扱わない診療科は存在しない”と言うといささか大げさに聞こえるが、下痢を経験したことのない読者諸氏はいないであろう。下痢は医学的に便重量の増加>200〜250gと定義されるが、実際には軟便・便の液状化や排便回数の増多(>3行/日)をもって下痢と捉えることが多い。患者の訴える下痢を切り取るための1st stepは、下痢の発症がいつからか(つまりはonset)を明らかにすることである。すなわち発症後2週以内の下痢は“急性下痢”と分類され、その多くはself-limitingに軽快する感染性腸炎が該当するため、日常診療で鑑別に困ることは少ない。一方で、4週以上続く下痢は“慢性下痢”と分類し、非感染性病態がほとんどで、鑑別疾患も多い。具体的には、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患、吸収不良症候群などを想起するが、実臨床では医原性下痢も少なからず経験する。慢性下痢の患者を診たら、まずは患者が内服している薬剤をすべて洗い出し、下痢をきたす薬剤の整理から始めるとよい。教科書的には、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、PPI(プロトンポンプ阻害薬)が下痢をきたす悪名高き薬剤として知られているが、実は高血圧の治療薬としてわが国で頻用されるARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)も下痢をきたしてしまう。よかれと思って処方した薬で、患者が苦しむのは避けたいところである。ぜひ、この機会に薬剤性下痢に関して整理してみたい。
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