特集 “ナゾ”の痛み診療ストラテジー|OPQRSTで読み解く
【総論】
—痛み治療の新しい視点—慢性痛のサイエンス
半場 道子
1
1福島県立医科大学医学部整形外科学講座
pp.382-386
発行日 2019年4月15日
Published Date 2019/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429201995
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はじめに
本誌に慢性痛の特集が企画され、総論「慢性痛のサイエンス」を執筆することになった。慢性痛は急性痛が長引いたものではなく、脳回路網の変容に伴って生じる痛みが主体である。急性痛に用いられる治療薬や治療法は効を奏しないことが多く、うつ状態、全身の疲労感、睡眠障害、孤立感などを伴う。国際疼痛学会(Intemational Association for the Study of Pain、以下IASP)は、「治療に要すると期待される時間の枠組みを超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疾患に関する痛み」と定義している。
慢性痛の患者数は、世界各国とも共通して人口の2割以上に達し1)注1)、痛みに要する医療費は、心臓病やがんなど重篤な疾患の医療費を遥かに上回っている2)注2)。“痛みで死ぬ訳ではないから”と後回しにされている間に、痛みは世界のEpidemicになってしまった。超高齢社会を迎えた日本では、寿命の伸びが苦痛時間の延長となっており、慢性痛の軽減・治療は焦眉の問題である。このような社会的背景のもとで企画された本特集が、総合診療における痛み治療の嚆矢となり、多面的な取り組みに結びつくことを心から願うものである。
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