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書評 「慢性痛のサイエンス 脳からみた痛みの機序と治療戦略」—半場道子【著】
高橋 和久
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1前・千葉大大学院整形外科学
pp.1300
発行日 2018年11月1日
Published Date 2018/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201177
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半場道子先生のご講演は何度か拝聴したことがある。痛みに関する脳科学,神経科学についての最新のお話で,大変興味深くお聞きした。しかしながら,あまり馴染みのない脳の解剖用語や限られた講演時間の中で,先生が話されたことを全て理解できたとは言えなかった。一度,先生の知識と考え方をまとまった形でうかがいたいと願っていたところ,書籍執筆のお話をお聞きし,上梓されたらぜひ拝読したいと申し上げた。本書を拝受後,3日ほどで読ませていただいた。
本書は,慢性痛を侵害受容性,神経障害性,非器質性に分け,そのメカニズムについて脳科学,神経科学の観点から最新の知見を紹介している。近年の脳機能画像や基礎医学的な研究成果を基に,脳を中心とする神経系のダイナミックな機能を解説している。さらに,解明されたメカニズムを基に慢性痛に対する各種の治療法と,その科学的根拠について述べている。それぞれ興味深い内容であるが,中でも「骨格筋は分泌器官であり,筋活動は慢性痛の軽減に有効である。また,筋活動により多くの疾患の原因となる慢性炎症を抑制でき,疾患の予防につながる」という事実は大変興味深く,日常診療でも患者さんの指導に役立てたい知識である。
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