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Case
寝返りで一過性の方向交代性向地性頭位眼振とめまいをきたした1例
患者:44歳、女性。
主訴:寝返りでの回転性めまい。
現病歴:2日前起床時にめまいを自覚。その後、寝返り(特に右耳下)で回転性めまいが出現する。仰向けに戻ると次第にめまいはとれた。再び右耳下になると同様のめまいがあり、真っ直ぐ寝ていた。嘔気はあるが、嘔吐まではなかった。真っ直ぐ起き上がり、そのままじっとしているとめまいはなく、何とか日常生活は可能だった。しかし、前かがみになったとたん強いめまいがあり、倒れてしまった。不安になり脳外科を受診した。頭部MRに異常はなく、耳鼻咽喉科受診を勧められた。その後、頭を動かさないようにしているので強いめまいはないが、フラツキが持続し、本日受診した。自覚的に難聴・耳鳴・耳閉感などの蝸牛症状はない。明らかな脳神経・小脳障害を疑わせる自覚症状もない。
既往歴:特記事項なし。昨年も同様のめまいがあったが、1日で軽快した。
現症:鼓膜所見に異常はない。注視眼振検査では眼振や異常眼球運動はない。閉眼足踏み検査(約30歩)では左に約30度偏倚したが、明らかな失調はない。赤外線フレンツェル眼鏡を装着し、ビデオ記録をしながら頭位・頭位変換眼振検査を行った。坐位では自発眼振はない。坐位から仰臥位正面へ頭位変換を行ったが、眼振やめまいは観察されなかった。仰臥位正面から右耳下頭位あるいは左耳下頭位へ頭位変換を行うと、一過性(1分以内)の方向交代性向地性頭位眼振が観察された。右耳下頭位と左耳下頭位との間で頭位変換(Head roll test)を行うと、右耳下頭位でめまいと強い右向き(向地性)水平性眼振が出現し、次第に減弱消失した。その後、第2相性眼振と考えられる左向き水平性眼振が出現した。左耳下頭位では右耳下頭位より弱い左向き(向地性)水平性眼振が出現し、やはり減弱消失した(動画1、2)。Head roll testで一過性(1分以内)の方向交代性向地性頭位眼振が観察され、右耳下頭位が左耳下頭位より眼振やめまいが強いことより、「右外側半規管型BPPV-半規管結石症」と診断した。
治療:診断に続いて、右耳下頭位から、左耳下頭位、さらに左耳下135度頭位、最後に坐位に、頭位や体位を変換する健側下135度法(動画3)を1回行った。当日は就寝まで頭部を強く曲げない、また就寝時は患側を上にして寝てもらうように指導した。翌日再診したが、めまいは消失し、Head roll testでも眼振やめまいは観察されなかった。
*本論文中、[▶動画]マークにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年9月30日まで)。
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