New Books
『「型」が身につくカルテの書き方』—佐藤 健太(著)
藤沼 康樹
1,2
1医療福祉生協連家庭医療学開発センター
2千葉大大学院看護学研究科附属専門職連携教育研究センター
pp.625
発行日 2015年7月15日
Published Date 2015/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200274
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
これまで寡聞にして,カルテ記載に関してフォーマルな医学教育カリキュラムはあまり目にしたことがない.むろんいわゆるPOSシステムにおけるSOAP(主観的情報,客観的情報,評価,診療計画)に分けて記載することはよく普及しているが,その意味はあまり知られていない.
本書の特徴は,医学教育における医師の成長段階としてのRIMEモデル(Reporter⇒Interpreter⇒M-anager⇒Educator)と,SOAP(Subjective,Objective,Assessment,Plan)を対応させて,診療記録を教育や診療の質改善と結び付けているところにある.そして,これまでは単に“患者の訴えを書く領域”とされていたSOAPにおける「S」を「間接的に得られた情報」,“診察や検査結果を記載する領域”とされていた「O」を「直接観察による所見」と明快に定義し直している(これらの情報をどう集めるかは,診療の場によって違うことも強調されている).アセスメントの「A」はしばしば問題リストや異常値の羅列になるが,これを「意見」と定義し,省察のもとに自身の考えを記載する場としている.このアセスメント「A」に意見を論理的に記載すること自体が,臨床推論能力の訓練そのものになるであろう.それに基づき診療計画「P」を記載するが,ここに含まれる内容として予防や退院調整,介護福祉サービスを重視しているところが,著者の総合診療医らしさを感じる.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.