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この一冊があれば自信をもって対応できる
医学に限らず,科学の分野はまさに日進月歩であり,しばらく前に通用していた知識,技術が日々変化していっています.われわれの日常臨床の専門分野である内分泌代謝分野についても同様で,例えば糖尿病治療では10年くらい前は研究の一分野であったインクレチンが,日本でも昨年から一気に4種類の薬剤が市販され,糖尿病治療を大きく変えようとしています.また第3版の序に吉岡先生がお書きになっているように,原発性アルドステロン症の診断の進歩や,実はありふれた疾患であることの再認識,メタボリックシンドロームのクローズアップ,アクロメガリーの治療薬の進歩,エプレレノンの登場など内科的にここ数年,内分泌代謝疾患の診断治療のパラダイム変化が急激に起きてきています.またこれも吉岡先生が書いておられますが,内分泌代謝疾患は決してまれなものでなく,他の分野の診療でも,例えば糖尿病は避けて通れないし,電解質異常を的確に補正するにも原因として内分泌疾患を正確に鑑別しないと治療効果が上がらない,また頻脈・不整脈の背景に甲状腺機能異常がかなりの割合で潜み,見逃されると後で大変です.また特異的な症状を出さない場合が多く,常に内分泌代謝疾患を種々の病態の背景疾患として考えないといけないことを,いろいろな分野の先生方に認識してもらう必要があります.
その中,吉岡・和田両先生が,内分泌代謝分野の進歩をアップデートなかたちで改訂されたのが,この『内分泌代謝疾患レジデントマニュアル 第3版』です.もともとレジデントや非専門の先生方にとって,取り付きにくい分野である内分泌代謝疾患に関して,手っ取り早く,かつ正確に診断・治療の知識を解説されたものですが,実はわれわれ専門家も白衣のポケットや外来・病棟の机に常備し“あれどうだったかな?”と思ったときいち早く手が届くのがこのマニュアルです.今回の改訂では2010年に変わった事項も(例えばHbA1c値のJDS値とNGSP値の問題,診断基準の改定内容,インクレチン治療や,原発性副甲状腺機能亢進症でMIBIシンチが保険適用になったことなど)カバーされており,タイムリーな改訂です.また,甲状腺疾患と妊娠の問題,バセドウ病治療ガイドラインの内容など詳しく書かれており,内分泌を専門とするわれわれも知識の整理に非常に有用な一冊です.また巻末にインターネット時代を反映し種々の学会,ガイドライン等のwebサイトを紹介しているのも新たな配慮と思われます.
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