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難解な領域ではじめに目を通しておきたい書
『がん診療レジデントマニュアル』も第5版となった.初版から既に13年を数え,とても息の長い本である.いかにがん診療医に必要とされつづけている本であるかがうかがえる.私の仕事部屋の本棚にも初版から全版が揃えられている.各版の表紙の色が異なることもあり(徐々に厚くもなっている),並べると案外きれいなものである.マニア心をくすぐるのでプレミアでも付かないかなぁなどと不謹慎なことまで考えてしまう.実は大変お世話になっているので捨てられないのである.がん薬物療法を診療の主とする医師にとっては,複雑で解釈しにくいこの領域における実臨床的な内容が,非常に分かりやすく整理されているため,初めに目を通す本としては最適である.
第3版までは,常に白衣のポケットに入れて,日常診療にあたっていた.治療方針が分からない症例に出会うとすぐ調べた.治療計画をたてて再び内容を確認した.症例を検討するときにも本マニュアルを開きながら議論した.第4版は,地方での学会会期中が発売日であったため,発表に来ていた医局員とわざわざ医学専門書を取り扱う書店を探して,発売日当日に購入した.まるで,人気ゲームソフトの販売みたいである.さらに,第4版は2冊所有している.別に他からプレゼントされたわけではない.自分のポケットから支払って購入している.実は,この時私は,臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医の試験を受けるため,このマニュアルを試験合格に向けて覚えるべき知識を整理するために使用していたのである.まるで学生時代のように赤線をたくさん引いているうちに,真っ赤になってしまい,日頃の臨床時に調べにくくなってしまったので追加1冊購入した次第である.結論から言えば,がん薬物療法専門医を受けようとしている医師にも,ぜひお薦めしたい.膨大な知識をこれだけコンパクトにまとめている本はない.本書を読んでから,臨床腫瘍学会の教育セミナーを聴くと,理解しにくい自身の専門外の領域のがんの知識がよく頭に入る.また,携帯可能であることも大きい.この件については後述でその意味を追加する.自分勝手な話ばかりでなく,書評として本来の意義である内容について触れる.
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