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■はじめに
本特集では「粘液産生胆管腫瘍」を取り上げ,病理・臨床の第一線の先生方に解説をお願いした.この疾患の定義はいまだ明確ではないが,現時点では“臨床的に認識しうるほどの多量の粘液を産生する胆管腫瘍”と大雑把にまとめておくのが良いと考える1~3).粘液産生胆管腫瘍はきわめてと言うほどではないが比較的稀な腫瘍であり,10例以上の切除例を持つ施設は極々少数である.当科は胆管腫瘍が多い施設であり,現在までに約600例の胆管癌を切除してきたが,粘液産生胆管癌はわずか16例にすぎない.一方,当科における粘液産生膵腫瘍(癌,腺腫,過形成の合計)の切除例は100例を数える.したがって,外科臨床における粘液産生胆管腫瘍の頻度は粘液産生膵腫瘍の1/5~1/10程度,当科のバイアスを考慮するとそれ以下であろうと推察される.
粘液産生膵腫瘍は1982年の大橋・高木らの『癌研III型膵癌』の報告4,5)が嚆矢となり,それ以降,多数の症例が蓄積され数々の議論がなされてきた.その結果,卵巣様間質の有無により粘液産生膵腫瘍を膵管内乳頭腫瘍(IPMN)と膵粘液性囊胞腫瘍(MCN)という2つの疾患単位に分けることでコンセンサスが得られ,その疾患概念が確立されつつある6~9).粘液産生性の膵腫瘍と胆管腫瘍は,粘液産生による膵管・胆管の拡張,囊胞性病変の存在,緩徐な臨床経過,良好な予後など共通する点が多く,胆管腫瘍を膵腫瘍のカウンターパートとして扱っていこうとする趨勢にある10~13).しかし,幾つかの相違点も次第に明らかになり,カウンターパートとして理路整然と体系化できるかどうかが問題となっている14,15).
以下,筆者が日頃感じている素朴な疑問を述べ本特集の序説としたい.
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