講座 症候からみた腹部エコー検査のこつ
鑑別のポイントと描出のテクニック
痩せ(体重減少)
増田 英明
1
1横浜市立市民病院がん検診センター
pp.424-428
発行日 2003年5月15日
Published Date 2003/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1427100473
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はじめに
痩せ(体重減少)を主訴とする疾患は非常に多種多様である.Foster1)は,①代謝疾患(糖尿病),②内分泌疾患(甲状腺機能亢進症等),③消化器疾患(sprue,炎症性腸疾患等),④感染症疾患(AIDS,結核等),⑤各種悪性腫瘍(消化器癌,リンパ腫等),⑥精神疾患(神経性食欲不振症等),⑦腎疾患(尿毒症等)などを痩せ(体重減少)を主訴とする疾患として報告している.これらの鑑別は画像診断のみでは決して容易ではない.体重減少の主訴のみならず,他の症状や理学所見,臨床検査値を参考にして病態を考えるべきであることは言うまでもないが,特に消化器に関連する疾患として念頭に置かなければならないのは糖尿病と消化器系の悪性腫瘍である.腹部を中心としたスクリーニング超音波検査(以下US)を依頼された場合には,まず消化器悪性腫瘍の存在診断を念頭に検査を施行する.特に膵癌の存在診断は非常に重要であり,糖尿病と臨床診断されているケースでも糖尿病に合併する膵癌の検出をはじめ,膵臓の綿密な検索は重要である.膵癌は黄疸や疼痛を主訴に受診し,診断されることが多いと思われがちであるが,膵体尾部や膵鈎部癌は初期には症状が乏しく,わずかな体重減少を主訴に病院を受診することや,検診で発見されることは決して少なくない.
本稿では痩せ(体重減少)を主訴に腹部USを依頼された場合の注意すべき点について症例を呈示しながら,特に膵のスクリーニング方法を中心に解説する.
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