特集 マルチリンガルブレイン
扉
pp.201
発行日 2021年3月1日
Published Date 2021/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201740
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人間は当然ながら言語を操る生物である。自分の生まれ育った環境の中で,通常は1つの母国語を使う人が多いわけだが,昔から例えばシュリーマン(Johann Ludwig Heinrich Julius Schliemann; 1822-1890)のような多国語を流暢に話す「語学の天才」のような人が知られていたし,そのような民族も多い。近年はグローバルな移動や交流が進む中で,2つの言語を操るバイリンガル,3つ以上の言語を操るマルチリンガルの人も飛躍的に増えてきていると思われる。多言語の問題を考えるに当たっては,発達過程の中で,脳の予備的準備状態の段階,言語習得の臨界期,その後の第2言語・第3言語などの習得の段階など複合的,多層的な視点で考える必要がある。また,多言語を学習する,用いることが脳の予備力を高める,認知機能維持につながるという可能性もある。さらに,失語症をはじめ,脳疾患に基づく病的状態では,習得してきた多言語に関しても新たな知見が得られてきている。こうした知見をもとに,マルチリンガルをつくる脳について考えてみたい。
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