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神経科学の原理的な法則発見への端緒
酒井 邦嘉
pp.191
発行日 2021年2月1日
Published Date 2021/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201734
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総説「大脳皮質の単位回路」 第70巻第12号(2018年12月号)pp1381-1388
細谷俊彦,中川 直,米田泰輔,丸岡久人
神経科学の原理的な発見は,物理学などと比較してみると,かなり乏しいように感じられる。もちろん,歴史的背景・技術的進歩の違いや,研究者の数などを度外視して比較しても仕方ないのだが,科学の進歩を支えるブレイクスルーとしては,限定的なのだ。目先の興味ではなく,目に見えない根本的な「法則性」に迫るような神経科学研究がもっと必要ではないだろうか。
神経科学のマイルストーンを具体的に挙げてみると,カハールによるニューロン説(神経機能単位の発見),ホジキンとハクスリーによるイオンチャネル仮説(神経伝達の解明),そしてヒューベルとウィーゼルによる視覚野の階層仮説(特徴抽出の実証)のように,仮説なしには見えない法則が明らかとなっている。特に階層仮説と同時期にマウントキャッスルが提唱した「皮質カラム(column)仮説」は,大脳皮質の構造と機能を結びつける重要なアイディアとして階層仮説に貢献したものの,長らく論争が続いていた。
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