書評
「《ジェネラリストBOOKS》“問診力”で見逃さない神経症状」—黒川勝己,園生雅弘【著】
砂田 芳秀
1
1川崎医科大学神経内科学
pp.524
発行日 2020年5月1日
Published Date 2020/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201556
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著者の黒川勝己先生は,園生雅弘先生の薫陶を受けた電気生理診断を専門とする脳神経内科専門医であるが,臨床現場では一貫して患者第一主義を貫き,自らgeneral neurologyを標榜しているように,そのオールラウンドな臨床能力には定評がある。学生への講義,研修医やかかりつけ医を対象とした彼の講演は大変わかりやすいと高く評価されている。本書は彼が1年にわたって『週刊医学界新聞』に連載し,好評を博した「“問診力”で見逃さない神経症状」というシリーズに総論を加え単行本としてまとめたものである。
神経解剖の複雑さ,鑑別診断の多さ,神経診察の煩雑さのゆえだろうか,神経疾患の診療に苦手意識を持っている研修医やかかりつけ医は多い。本書はそのような方にぜひ一読してもらいたい。本書のユニークな特徴は,神経診察手技や症候学ではなく,問診の仕方にフォーカスしている点にある。頭痛,めまい,しびれ,一過性意識消失などの日常診療で遭遇することの多いコモンな神経症状を取り上げ,見逃してはいけない重篤な神経疾患の鑑別に役立つ,問診のポイントが実際の質問のせりふとともにわかりやすく解説されている。例えば,めまいを訴える患者に対して,「めまいの持続時間」に加え「顔のしびれ感」の有無を聴くことで,椎骨脳底動脈系のTIAを見逃さない。痙攣発作患者の診察に際して,目撃者から「発作中,目は開いていましたか」と聴くことで,てんかん発作を鑑別できる,など。知っているか否かで診療レベルに歴然とした差が出るようなポイントが述べられている。一読いただければ,明日から自信を持ってこうした症状の患者の診療に向き合えるようになるだろう。
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