連載 臨床で役立つ末梢神経病理の読み方・考え方・9
クロゥ・深瀬症候群(Crow-Fukase症候群;POEMS症候群)
佐藤 亮太
1
,
神田 隆
1
1山口大学大学院医学系研究科臨床神経学
pp.1419-1423
発行日 2019年12月1日
Published Date 2019/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201463
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はじめに
クロゥ・深瀬症候群(Crow-Fukase syndrome:CFS,欧米ではPOEMS症候群と呼ばれており,POEMSというのはpolyneuropathy,organomegaly,endocrinopathy,M-proteinemia,skin lesionの頭文字に由来する)は多発ニューロパチー型の末梢神経障害に加えて,全身の浮腫,臓器腫大,内分泌異常,M蛋白血症,皮膚病変,骨変化などの全身症状を伴う症候群である。CFSを末梢神経障害だけで診断することは不可能であり,全身の症状や神経学的所見,血液検査や電気生理学的所見を総合的に判断して診断しなければならない。しかし,CFSは末梢神経障害で発症する症例が多く,病初期には上記の全身症状すべてが揃うことは稀であるため,しばしば慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy:CIDP)と誤診され,確定診断が遅れてしまう。CFSの治療はほぼ確立されているが,CIDPなどの誤った診断のもとに免疫グロブリン大量静注療法などの無効な治療がなされ,重篤な障害に至ってしまう症例が稀ならず存在する。腓腹神経の生検病理所見だけではCFSを確定診断することはできないが,末梢神経障害のみが存在する病初期にCIDPなどの他疾患を正確に鑑別する目的で腓腹神経生検は有用である。連載第9回となる今回はCFSの腓腹神経生検病理所見を提示する。
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