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わからない言葉があればすぐにスマホやパソコンで検索して(それも無料で)調べる習慣がついている私たち。医学英和辞典を手元に置く必要があるのかと時代錯誤に思えるでしょう。日進月歩の医学分野で一般的に使われる用語を67,000語に集約し,それも,医学だけでなく薬学・検査・看護・介護の分野でも使えることをめざして作られたなんて,そんな辞書が可能なのだろうか? これがこの辞書を知った時の私の初めの正直な気持ちでした。同時に,インターネット上の情報収集は,いくら便利で,頻繁に利用し,その場は用を足しても,断片的で頭の中を素通りする気がして,専門用語が自分の言語体系として血肉になる感覚が得られにくいことが,以前から気になっていました。
本書はポケット判でとてもコンパクトなので手に収まりが良く(手触りも良く),机上でもまったく邪魔になりません。何よりも,充実した内容と,印象強く理解を助け知識を増やす効果にはただただ驚いています。それに,医学以外の領域にも深い関心と配慮が本当に向けられているのです。例えば,“nurse”(看護師)という言葉ひとつをとっても,“community nurse”(地域看護師)と“public health nurse”(保健師)の区別が的確です。“assistant nurse”(看護助手),“practical nurse”(准看護師),“registered nurse”(看護師),“nurse practitioner”(ナースプラクティショナー)の区別や表記,さらにリエゾンナース,リンクナースなどの近年使われるようになった用語にもわかりやすい説明が付いているのです。続いて次の“nursing”の項にも,“nursing home”(老人保健施設)や“nursing ethics”(看護の倫理)など,日本語でなじみがあっても英訳しにくいような言葉がきちんと載っています。かといって,医療者におもねるのではなく,nursingのそもそもの意味は「(1)授乳,(2)看護,養育」というように,社会常識的な見解も端的に示しています。
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