--------------------
今月の表紙
河村 満
1
,
岡本 保
2
,
菊池 雷太
3
1奥沢病院
2富坂診療所
3汐田総合病院神経内科
pp.1346-1347
発行日 2017年11月1日
Published Date 2017/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200914
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
今月の写真は,「バセドウ症候群と強皮症」という論文からのものです。現在では,バセドウ病が自己免疫疾患として捉えることができ,橋本病とともに全身性強皮症が合併することはよく知られています。しかしながら,この論文が発表された1910年代は,エールリヒ(Paul Ehrlich;1854-1915)により現代免疫学が切り拓かれていたものの自己抗体の発見までにはもう少し時間のかかる時代で,この2つの疾患のつながりはよくわかっていませんでした。
そのような中,著者のマリネスコ(Gheorghe Marinescu/ルーマニア語;1863-1938)らは強皮症とバセドウ病の合併が多いことから両者間に病因論的関連性があるのではないかと考え,自験例の紹介に加えて非常に多くの先行報告を丁寧にレヴューしています。彼らの結論は,甲状腺の機能障害が交感神経系に働きかけ,その結果強皮症が出現するというもので,残念ながらそれ自体に現代的な意味は見出せませんが,不世出の神経学者による症例描写と病因の綿密な検討には,やはり目を瞠るものがあります。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.