ポートレイト
アレクサンドル・ロマノヴィチ・ルリヤ—心理活動の脳機構の探求とその障害の診断,治療の実践
鹿島 晴雄
1
1国際医療福祉大学大学院
pp.579-585
発行日 2016年5月1日
Published Date 2016/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200441
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Ⅰ.その生涯1)
アレクサンドル・ロマノヴィチ・ルリヤ(ルーリヤ)(Александр Романович Лурия;1902-1977)はロシアの卓越した心理学者であり,また20世紀の指導的な神経心理学者の1人である(Fig. 1)。ルリヤは1902年,ヴォルガ川沿いの町カザンに生まれ,1921年カザン大学社会科学部を卒業。大学在学中,革命直後の教育状況の変化の中で,人間の心理と社会,歴史との関係に大きな関心を向けるようになる。
1923年,モスクワ心理学研究所に招かれ,1924年より1934年まで,ヴィゴツキー(Лев Семенович Выготский;1896-1934),レオンチェフ(Алексей Николаевич Леонтьев;1903-1979)と共に心理発達の問題に関する研究を行い,いわゆる「心理発達の文化・歴史的理論」の形成に加わる。ヴィゴツキーとの共同研究を通して,ルリヤは認識や言語などの人間の心理活動の発達を社会・歴史的に捉える立場を固めた。この間のルリヤの業績としては,感情の心理生理学的研究(これは「The nature of human conflicts」(1932)としてまとめられ,それにより1937年に学位を受けている)や子供の心理発達における言語の役割,人間の心理活動の歴史的性格に関するものがある。
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