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連載 神経学を作った100冊(78)
ベルガー「人間の脳波」(1938)
One Hundred Books which Built up Neurology (78)-Hans Berger: "Das Elektrenkephalogramm des Menschen" (1938)
作田 学
1
Manabu Sakuta
1
1日本赤十字社医療センター神経内科
1Department of Neurology, Japanese Red Cross Medical Center
pp.718-719
発行日 2013年6月1日
Published Date 2013/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101529
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ベルガー(Hans Berger;1873-1941)の興味の中心は,心理状態,例えば,注意,情動あるいは感覚刺激を客観的なデータから捉えられるのではないか,というテーマであった。この目的で,彼はまず脳の容積変動測定(プレチスモグラフィー)を考えた。脳手術で頭蓋骨をはずした患者を使い,脈拍の変動をみたが,結果に失望し,次いで感覚誘発電位の研究に入った。動物実験を8年間行ったが,当時の実験設備ではデータが得られず,これも諦めることとなった。そして,次に行ったのが,脳の温度変化の測定であった。心理学的な刺激を与え,温度の変化をみるというものであったが,これも複雑な心理機構を反映させることは叶わなかった。そして,第一次世界大戦が彼の研究を中断させた1)。
戦後,脳の電気活動を記録しようと試み1920年に1人の医学生の頭皮に電極を付け,小さなエデルマン弦線検流計を用いたが,何も記録することはできなかった。しかし,その後も試行錯誤を続け,1924年7月6日に17歳の脳腫瘍患者に,開頭後,電極を挿入し,初めて彼のいう「脳波」を記録することができた。彼は電位を最大で0.1~0.2mVと考えていた。その後,ありとあらゆるアーチファクトの可能性を検討した末に,この「脳波」がアーチファクトではなく,実際の脳波の記録であることを確信して,1929年に初めて報告を行った2)。
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