書評
「神経解剖集中講義 第2版」―ジェームス D.フィックス●原著 寺本 明,山下俊一●監訳 秋野公造,太組一朗●訳
水澤 英洋
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1東京医科歯科大学大学院・脳神経病態学
pp.297
発行日 2013年3月1日
Published Date 2013/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101444
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このたび,待望の『神経解剖学集中講義(第2版)』が出版された。本書は2007年5月15日の第1版第1刷から昨年までに3刷を数える,好評の名著の改訂版である。それは原著者のMarshall大学医学部解剖学のJames D. Fix名誉教授ならびに現Louisville大学解剖科学・神経生物学のJennifer K. Brueckner教授による原著の素晴らしさに加えて,監訳者である寺本明東京労災病院院長,山下俊一福島県立医科大学副学長,そして訳者である秋野公造参議院議員・長崎大学客員教授,太組一朗日本医科大学武蔵小杉病院脳神経外科講師の創意工夫によるところが大きい。
本書は,神経組織学,神経発生から始まり髄膜・脳室・脳脊髄液,血液を経て,脊髄,脳幹,視床,小脳,大脳基底核,大脳皮質と上向性に各章が配置されている。大きな特徴の1つは,単に解剖所見にとどまらず,必ず機能についても記述されていること,もう1つは,組織学の章の中に中枢と末梢の腫瘍の項,発生の中に先天奇形の項,その他多くの「臨床との関連」の項などが準備され,随所に疾患や病態の記述が散りばめられていることである。脊髄,脳幹,大脳皮質の章の少し後で,それぞれ脊髄と脳幹の病変,失語症などが別立ての章となっていることでもわかる。すなわち,常に臨床を意識した構成になっており,これは読者にとって非常に理解しやすくなっている。
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