書評
「新てんかんテキスト――てんかんと向き合うための本」―静岡てんかん・神経医療センター 井上有史・池田 仁●編集
池田 昭夫
1
1京都大学大学院医学研究科神経内科
pp.927
発行日 2012年8月1日
Published Date 2012/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101269
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このたび南江堂から『新てんかんテキスト――てんかんと向き合うための本』が発刊されました。これは『てんかんテキスト――理解と対処のための100問100答』として,大変好評であったテキストの改訂新版です。旧版は1991年に発刊され,1999年に改訂2版が出版されています。
旧版シリーズは,わが国において,1980年代以来現在に至るまで,てんかんの内科・外科治療を含めた包括的てんかん診療の,名実ともにメッカである旧 国立療養所静岡東病院(現 静岡てんかん・神経医療センター)が中心となり,清野昌一先生と八木和一先生の編集でスタッフの方々によって作成されたものでした。てんかん診療では,てんかんの診断・治療の単に学問的な知識だけではなく,日常生活の問題と対処,社会生活上のさまざまな問題点や社会制度の活用のための知識と経験なども必要で,特に後者は大変重要です。このような患者さんが抱える問題は種々多様であるにもかかわらず,後者に関するまとまった情報あるいは指南書的なものは,本書以外には,まったくといってよいほどありませんでした。本テキストの中では,日頃のプロフェッショナルとしての経験と学問的な知識を,実情に沿うようにわかりやすく解説されていました。もちろんこれは患者さんの抱く疑問に対して答える形で作成されていたものの,てんかんの初学者には,大変役に立つものでした。評者も本書あるいはその内容を患者さんに紹介するだけではなく,自分自身の浅学を補うべく初版のときから購入して,利用させてもらってきた1人です。
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