書評
「《神経心理学コレクション》レビー小体型認知症の臨床」―小阪憲司,池田 学●著,山鳥 重,彦坂興秀,河村 満,田邉敬貴●シリーズ編集
岩田 誠
1,2
1東京女子医科大学
2メディカルクリニック柿の木坂
pp.1355
発行日 2010年12月1日
Published Date 2010/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100807
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臨床家にとって最もやりがいのある仕事は,それまで誰も気づいていなかった病気や病態に世界で初めて気づき,それを世に知らしめることである。最初は,自分の小さな気づきがそれほど大きな意味を持つとも思わず,単に多少の興味を惹かれた事実を記載するだけである。それが大発見であるというようなことには,世間一般だけでなく,発見者当人もまだ気づいていない。当然のことながら,その記載は世の中に大きな反響を呼ぶほどのものにはならず,小数の臨床家の記憶の隅にしまわれるだけである。しかし,時間が事の重大さを明らかにしていく。世の中の人々が,同じことに気づきだすと,その最初の記載が大きくクローズアップされる。そして世間は,その発見が日常の臨床の場での,緻密ではあるがごく日常的な観察に始まったことを知る。臨床家が毎日飽きもせず患者に接しているその営みの中から大きな発見がなされ,医学の歴史の新しいページが開かれていくとき,いつも繰り返されるこのプロセスは,現在最も注目を浴びている変性性デメンチアの1つであるレビー小体型デメンチアにおいても然りであった。この書物は,その発見者である小阪憲司先生が,後輩である池田学先生にその気づきのプロセスを語っていく書物である。これを読む人は皆,臨床家の観察というものが,いかに大きな発見につながっていくかを知り,感動を覚える。聞き手の池田先生も,臨床の場において次々と大きな発見を成し遂げてこられた方であるだけに,お2人の対談は,そういう臨床の場における発見の意義を生き生きと示す興味深い読み物となっており,ワクワクしながらこの病気の発見史をたどっていくことができる。
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