書評
「多飲症・水中毒 ケアと治療の新機軸」―川上宏人,松浦好徳●編
穴水 幸子
1
1慶應義塾大学精神神経科
pp.768
発行日 2010年7月1日
Published Date 2010/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100722
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水のような本である。『多飲症・水中毒―ケアと治療の新機軸』という題名の通り,至極当然のように水と身体のかかわりのことが書かれた本なのではあるが。ブルーと白の2色のシンプルな美しい装丁で飾られ,さっぱりとした筆致で書かれて大層読みやすい。しかし読者はその美しさに惑わされ,ふわりと読み流してしまってはいけない。この本には,多飲症に罹患した人々が示す,水への飽くなき要求と依存,あるいはその経過中に訪れる激しい消化器症状,失禁,低ナトリウム血症,神経症状,意識障害,けいれん発作,昏睡という身体症状が描かれている。本書は疾病に真正面から向かい合うタフでハードな治療記録でもある。
水中毒は精神科臨床医療では治療の中で,身体管理上,最も苦慮する病態の1つである。本書を紐説くと,ヒトの身体における水の在り方をあらためて意識させられる。
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