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はじめに
「臓器の移植に関する法律(平成九年法律第一〇四号。以下,臓器移植法)」は1997年7月16日に成立し,同年10月16日から施行された。
この法律には12条からなる附則があり,その第二条第一項には「この法律による臓器の移植については,この法律の施行後三年を目途として,この法律の施行の状況を勘案し,その全般について検討が加えられ,その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとする」とあるが,10年以上が経過しても改正は行われていなかった。
その間,わが国では脳死臓器移植の数が増えず移植医療が停滞し,移植を求めて海外に出かける患者に伴う問題(移植ツーリズム)や未成年を含む臓器不正売買などの社会問題が大きくクローズアップされ,2009年になってようやく改正の機運が高まり再び議員立法として同年7月に「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律(以下,改正臓器移植法)」が成立し,2010年7月11日より施行されることになった。
変更のねらいは,これまで年10件程度しか行われていないわが国の脳死臓器提供を増やすために,提供の条件を緩和することとも理解できるが,要約すると,以下のようになる。
(1) 臓器移植にあたっては“脳死は人の死”と定める。
(2) 提供者本人が,生前に書面で自分の親族への移植を意思表示したときにはそれを認める。すなわち,親族に対する臓器の優先提供を認める。
(3) 本人の臓器提供の意志が不明であっても,遺族がこれを書面で承諾するときには可能とする。
(4) その際の脳死判定においても本人の意思にかかわらず家族の書面による判定の承諾があれば可能とする。
(5) 15歳未満であっても家族の書面による承諾があれば可能とする。
Abstract
A key purpose of the revised act on organ transplantation is to accept brain death as a person's death in a generic sense for the purpose of increasing the number of organ transplants from brain-dead donors,allowing priority organ donation to relatives,and allowing organ transplants from children aged 15 years or older and a person of any age with the approval of family members.
Since the current law,enacted in June 1997,was implemented in October 1997,far fewer organs,including hearts,livers,and kidneys,have been transplanted in Japan than the corresponding number of organs transplanted abroad.
This situation is also caused by a lack of the knowledge regarding brain death among neurologists as well as a lack of skill among those who are in charge of the determination of brain death.
In Japan,there is no general consensus on whether brain death should be accepted as a person's death; however,there are people who require organ transplants. Understanding the standards of brain death determination and its neurological background may soon be mandatory for all neurologists.
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