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はじめに
臨床家が痙縮と考える所見はどのようなものであろうか。家族性痙性対麻痺患者の歩行は,両下肢をこわばらせ,棒のようにして下肢の各関節を固定して歩く。また,両下肢が交叉してハサミのような形を示す場合もある。階段を登ることはなんとか可能だが,降りることが特に困難である。椅子に座っているときに,膝ががくがくと上下にふるえる足クローヌスを示す場合もある。
運動の外観だけではなく,種々の刺激を加えた場合にも特徴のある反応がみられる。筋腱の叩打では腱反射の亢進がみられ,叩打された当該筋の周辺の筋に反射を誘発することもある(反射の亢進と拡延)。座位から臥位になった途端に,両下肢,時に体幹までも強く突っ張りしばらくその姿勢が解除できないような状況(攣縮)を示す場合もある。逆に,皮膚刺激によっても下肢屈筋群の持続的収縮が誘発されることもある(屈筋攣縮flexor spasms)。Ashworth変法で示されるように,特定の筋を伸展する際に発生する筋緊張亢進も痙縮の特徴である。ゆっくりした伸展でなく,急速な伸展が必要である。伸展速度に応じて緊張が強くなる。ある程度まで伸展したときに抵抗が最大になり,その後急速に減弱することがあり,この場合は,折りたたみナイフ現象(clasp-knife phenomenon)と呼ぶ。
神経症状を陽性徴候(positive symptoms)と陰性徴候(negative symptoms)に分ける考え方がある1)(Fig.1)。この考えに痙縮をあてはめると,本来その神経組織が持っていた機能を失う陰性徴候には,麻痺,分離運動の障害や巧緻性障害,疲労がある。また,中枢神経病変のために,本来はみられなかった機能が開放されて出現する陽性徴候には,本稿の主題である痙縮,腱反射亢進,膝・足間代,病的連合運動,下肢の屈筋反射亢進などが該当する。
中脳より上位の脳病変では,上肢の屈筋群,下肢では伸筋群に筋緊張亢進が著しい(脳性痙縮)。痙縮の出現には,病変が完成する速度が関係している。急激な発症が特徴である血管障害や脊髄損傷では,発症直後には筋緊張は低下し,随意的制御を完全に失う(脊髄性あるいは脳性ショック)。その後,数週間から数カ月で筋緊張は亢進し典型的な痙縮が完成する3)(Fig.2)。
Abstract
Considering the various studies conducted on spasticity,it is quite evident that the signs and symptoms of this disorder vary. In some cases of spasticity,spasms may be noted. An increase in velocity-dependent stretch reflexes has been proposed as a cardinal feature of spasticity. There are 2 possible mechanisms underlying increased stretch reflex of spasticity: one is the changes in gamma innervations and the other is one the changes in spinal motoneurons. Changes in gamma innervations for spasticity are not evident while the muscle are at rest. On the other hand,changes are clear in normal subjects during voluntary contraction of muscles,but not in sbjects with spasticity. We have discussed the changes in membrane properties caused by presynaptic inhibition,reciprocal Ia inhibitory function,recurrent inhibition,and autogenic Ib inhibition as the other candidate spinal mechanisms for spasticity.
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