連載 神経学を作った100冊(2)
Handbuch der Physiologie des Menschen
作田 学
1
1杏林大学神経内科
pp.194-195
発行日 2007年2月1日
Published Date 2007/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100025
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はじめに
ヨハネス・ペトリュス・ミュラー(1801~1858年4月)は1801年に,ライン川のほとり,コブレンツに靴匠の子として生まれた。学校に進むと数学と美術を得意とし,特にラテン語は母国語であるドイツ語よりも堪能であったという。18歳でボン大学に入学した。そして21歳でドクターになり,2年間をベルリンで過ごした後,26歳でボン大学の人体および比較解剖学の助手に任ぜられた。1833年にルドルフィ教授の後任としてベルリンに戻ったが,生理学と解剖学を同時に教える最後の教授となった。32歳のこの年に,彼のハンドブックの最初の部分が世に出ることになる。彼は実験生理学,海洋生物学をはじめ実に多種の偉大な業績を残したが,神経内科領域ではその主著「Handbuch der Physiologie des Menschen(人体生理学ハンドブック)」に記載した反射運動の理論と,感覚神経の特殊性能理論が有名である。感覚神経の特殊性能理論というのは,ある感覚神経を刺激すると,その刺激の強さのいかんにかかわらず,その神経に一定の感覚が生じる。例えば,眼球を強く押すと,圧覚でなく,色を感じるというものである。
彼はまたMueller's Archivとして知られる雑誌を創刊した。多くの優れた学者を育てあげ,1858年4月26日に亡くなった。
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