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増大号特集 糖尿病「前熟考期」の壁―あなたはどうして平気でいられるの?
Ⅲ何を伝える?
妊婦からヒントをもらう
なぜ妊婦はスムーズに準備期・行動期に入るのか
A hint from pregnant women
柳沢 慶香
1
1東京女子医科大学東医療センター 内科
キーワード:
①糖尿病合併妊娠
,
②母児合併症
,
③計画妊娠
,
④患者教育
Keyword:
①糖尿病合併妊娠
,
②母児合併症
,
③計画妊娠
,
④患者教育
pp.388-390
発行日 2014年5月15日
Published Date 2014/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415101735
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長年血糖コントロールが不良であった患者が妊娠を機に血糖コントロールが改善することは,日常の糖尿病診療でよく経験することである.「インスリンをきちんと打ちましょう」,「食事療法を守りましょう」……いくら言っても,血糖がよくならなかった患者が,いざ妊娠となると一念発起,「子どものために」なら血糖コントロールができるのである.
血糖コントロールが不良のままの妊娠は,母児にさまざまな合併症を引き起こす(表1).妊娠初期の血糖コントロールが不良であると流産のリスクが高まり,また,妊娠初期は器官形成期であるため,児の先天奇形の発生が高率となる.妊娠中期や末期の母体血糖が高値であると,児の膵インスリン分泌を刺激し巨大児となる.しかし,巨大児であっても臓器未熟性が存在すると,新生児低血糖症,高ビリルビン血症,低カルシウム血症,呼吸窮迫症候群,多血症などの合併症が起こる.また,母体では,妊娠自体が網膜症や腎症などの糖尿病合併症を悪化させることが知られており,特に妊娠後の急激な血糖改善は網膜症の増悪因子となる.妊娠中は,インスリン抵抗性の増大,脂肪分解の亢進などにより,非妊娠時より糖尿病性ケトアシドーシスに陥りやすく,妊娠高血圧症候群は頻度の高い合併症である.
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