特別企画 Master's Case File◆心に残った症例
2型糖尿病で苦労しているYS氏に学ぶ
三村 和郎
1,2
1福岡市医師会
2日本医師会総合政策研究機構
キーワード:
仕事優先
,
プライド
,
治療のドライブスルー
,
治療目的の一致
,
フィーリング
Keyword:
仕事優先
,
プライド
,
治療のドライブスルー
,
治療目的の一致
,
フィーリング
pp.426-428
発行日 2013年5月15日
Published Date 2013/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415101536
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症例の紹介
私には,患者さんであり25年前から(中断も長かったが)主治医をしている2型糖尿病のYSさんがいます.彼は現在,58歳です.しかし血糖コントロールが悪かった期間が長かったため,“視力の低下”,“血液透析”を余儀なくされています.彼は当時まだ診断が確定していなかった,LPL(リポプロテインリパーゼ)部分欠損家系でした.この体質はがんばっても太るし,中性脂肪は高くなり,催動脈硬化作用も普通の方と比べれば強く出ます.それなのに彼がただの食べ過ぎのメタボではあまりにも悲しい.彼は10歳で太り始めています.16歳の体重が116kgでした.
彼は大学を卒業して半年もしないで倒れました,倒れた時は血糖値が1,000mg/dL以上ありました.当時,家族に糖尿病の患者は一人もいませんでしたので,自分が糖尿病であるなど考えもしませんでした.彼は2度,生命の危険を伴う重症高血糖症に罹患しています.高血糖症は,若年肥満の2型糖尿病患者に起こる“清涼飲料水ケトアシドーシス”だろうと考えられます.清涼飲料水ケトアシドーシスは1型糖尿病の急性発症の症状に類似していますが,発症原因,病態が相違します.若者は疲れたり,のどが渇くと,習慣的に清涼飲料水を飲みます.当然,血糖値がさらに上がり,インスリンの相対的不足と高浸透圧で清涼飲料水ケトアシドーシスが発症します.多くの症例の経過は良好で,1~2週間でよくなります.彼らは若いので,すぐ症状は改善します.多くの若者は回復した時点で“病気”ではなく,“生活”,“仕事”を優先します.初期の段階で病気に気づいてくれるようなアプローチが必要です.
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