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はじめに
われわれの食生活は戦後急速に変化した.米と魚を中心とした食事から,肉類が中心の欧米化に伴い過去50年間で脂肪摂取量は4倍に増加した.自動車の普及など交通手段の発展に伴う運動不足も合わせて,肥満者は過去20年で2倍に増加し2,300万人と推測されている.肥満者の増加と並行して糖尿病患者数は急速に増加しており,平成19(2007)年の国民健康・栄養調査では糖尿病が強く疑われる人と糖尿病の可能性が否定できない人の推計は2,210万人にも達している.2型糖尿病の主たる病態はインスリン分泌不全とインスリン抵抗性にあるが,日本人は欧米人と比較して潜在的インスリン分泌能が低いことはよく知られた事実である.欧米人の2型糖尿病患者が高度肥満を背景にインスリン抵抗性の増大をきたすのに比し,日本人では肥満の程度は低く,軽度のインスリン抵抗性でもインスリン分泌能の弱さから糖尿病が顕在化するといわれている(Box 1).
日本人の糖尿病ではインスリン分泌能が低下しやすいこともあり,薬物療法においてスルフォニルウレア薬(SU薬)が頻繁に使用されている.SU薬は血糖降下作用が強く,奏効率も高いが,その反面,空腹感を感じることが多く食事療法の妨げとなることがあり,体重増加をきたしやすい.SU薬の投与により血糖値が一時的に改善しても,体重増加がインスリン抵抗性の増大をもたらす.その結果,インスリン需要が増大し,膵β細胞にさらなるオーバーワークを強いることとなるのは明白である.β細胞の疲弊は,すなわちβ細胞量減少を惹起し,長期的なコントロール悪化へとつながっていく可能性が高い.β細胞を疲弊させることなく,生理的インスリン分泌促進作用をもち,なおかつ体重を増加させない薬剤は,日本人2型糖尿病治療において理想的といえる.そこで注目されているのがGLP-1受容体作動薬である.
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