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榊原博樹先生の編集による本書であるが,実は榊原先生の著書と言ってよい.というのも,本書は榊原先生自らが執筆した部分が大部分を占め,その他の部分もほとんどが先生の教室員との共同執筆によるものであるからである.そのために本書は一貫したポリシーに貫かれたものとなっている.そのポリシーとは,睡眠科学の最新の知見と日本の睡眠医療の現状を踏まえて,現実的で最良の睡眠時無呼吸症候群(以下,SAS)に関する医療を行うためのノウハウを提供するというものである.
本書は4部に分かれている.第Ⅰ部ではSASの概念・疫学・発症機序や遺伝について最新の知見に基づく解説が加えられている.わかりやすさと科学的正確さを両立させるべく工夫が施されている.第Ⅱ部ではSASの病態と臨床的諸問題を扱っている.とくに生活習慣病を中心とする各種疾患との関連や,事故・医療経済などを通じてSASが社会に及ぼす影響について詳しく述べているほか,「日本のSAS診療の実態と診療連携構築の必要性」と題する1項を設け,日本の睡眠医療の現状を踏まえたうえで,診療連携についての榊原先生の提言がなされている.ちなみに,榊原先生には厚生労働省精神・神経疾患研究開発費による「睡眠医療における医療機関連携ガイドラインの有効性検証に関する研究」班(主任:清水徹男)の班員として睡眠医療における医療連携のあり方についてご尽力いただいている.第Ⅲ部では,SASの診断と治療について非常に具体的な記載がなされている.とくに,まだまだ不明な点の多いSASの口腔内装置による治療については,現状における最良の情報を提供している.第Ⅳ部では榊原先生の豊富な臨床経験を生かして,さまざまなSASの症例が記載されている.
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