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重症低血糖と認知症リスク
藤澤 智巳
1
1大阪大学大学院医学系研究科 老年・腎臓内科学
pp.471
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415100992
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近年わが国では高齢の糖尿病患者の増加が著しい.高齢者2型糖尿病の治療においては,QOLを保つこともさることながら,低血糖を回避することが重要であると広く認識されている.これは重なる低血糖が脳の高次機能を障害し,認知機能の障害を促進することを懸念してのことと思われる.しかしながら,これまで若い患者では急性の低血糖が認知障害に関与することが示されてきたものの,高齢2型糖尿病患者において低血糖が認知症のリスクとなるかについては明らかでなかった.最近,入院を必要とするような低血糖が認知症のリスクとなるか否かについて,高齢2型糖尿病患者に関するコホート研究が報告された.
米国北カリフォルニアのヘルスケアデリバリーシステムの会員である2型糖尿病患者(平均年齢65歳)16,667名を1980年から2007年にわたってフォローした.低血糖イベントについては病院の退院記録と救急部門の診断をもとに1980年から2002年まで調査し,2003年1月に認知症,軽度認知障害または総合的な記憶障害の認められなかった患者を対象に,認知症の診断について2007年1月まで追跡した.認知症(診断)に対する低血糖エピソードのリスクについて,Coxハザード比例回帰モデルを用いて評価した.年齢,性,人種,教育,BMI,糖尿病罹病期間,7年間の平均HbA1C,糖尿病治療,インスリン治療期間,高脂血症,高血圧,心血管疾患,脳卒中,一過性の脳虚血,末期腎不全に対して調整を行った.
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