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特集 いま一度 低血糖を考える
重症低血糖による中枢神経障害:低血糖脳症
Brain damage by severe hypoglycemia : Hypoglycemic encephalopathy
馬場 正之
1
1青森県立中央病院 神経内科
キーワード:
①昏睡
,
②片麻痺
,
③舞踏病
,
④失語
,
⑤けいれん
Keyword:
①昏睡
,
②片麻痺
,
③舞踏病
,
④失語
,
⑤けいれん
pp.609-613
発行日 2011年12月10日
Published Date 2011/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415101256
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重症低血糖とは
低血糖の定義は立場によって異なる.低血糖を50mg/dL以下1)とする教科書もあるし,60mg/dLを基準に記載しているガイドライン2)もある.このことには神経症状を生じる血糖閾値や血糖降下に対する内分泌学的反応が健常人と糖尿病患者では異なること,症状を発現させる血糖レベルが個々の患者によって異なること,さらには症状の現れ方が血糖低下速度によっても異なることなどが関係している.つまり,糖尿病患者においては血糖値が70mg/dLを切ると何らかの神経症状が現れてくる場合が多いものの,血糖レベルと症状の現れ方とは必ずしも一対一といえず,インスリノーマなどによる慢性的低血糖では40mg/dLを下回っても典型的な症状がみられない場合さえある.したがって,低血糖の重症性,すなわち重症低血糖をどう考えるかは,血糖値自体よりも神経症状の重篤さから判断するのが適切であるといえる.また,軽症低血糖とは血糖低下時に患者自身のグルコース摂取によって血糖を是正できるレベルの低血糖,重症低血糖とはそれを超えたもの,すなわち未処置の結果あるいは経口グルコース摂取後も症状が重篤化し,外部の医療スタッフによる処置が必要になった状態,と定義する立場もある3).この定義も低血糖絶対値よりも低血糖の結果である神経症状の軽重や回復を基準にしたものといえる.すなわち,重症低血糖とは特に中枢神経症状が遷延ないし回復不良に陥った低血糖と理解される.
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