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私たちは生きていくなかでさまざまな出来事を経験する.これまで全く糖尿病とは無縁であった人がある日突然,医師から糖尿病と告げられたら,どのような反応を示すだろうか.たとえ家族や親類に糖尿病を持つ人がいて,いつか自分も糖尿病になるかもしれないと思っていても,実際に糖尿病と診断されたら,きっとさまざまな思いや感情が湧きおこってくるに違いない.ある人はやはり糖尿病になったかと冷静に受け止めることができるかもしれない.しかし多くの場合,その実体のない病気にこれからどのように対処したらよいかわからず,誰もが戸惑うであろう.ましてや1型糖尿病と診断された小児や青年であれば,それは彼らにとって全く予期せぬ出来事である.「なぜ自分が糖尿病になったのか」,「信じられない」など,最初の反応として否認,怒り,悲嘆などの感情が引き起こされることが多い.これらの反応は個人,家族および社会的な考えや信念,判断などの要因によって異なるが,いずれにせよ糖尿病の診断は個人および家族にとって大きなライフイベントとなり,糖尿病に関連する最初のストレッサーとなるだろう.このとき生じるストレスに対して適切なコーピングを行うことができれば,糖尿病を自分のものとして受け入れ,望ましい自己管理行動を開始できると考える.
さらに糖尿病を持つことによって生活スタイルの変更を余儀なくされる.特に2型糖尿病の患者にとっては食事や運動などの生活習慣の改善が必要となるが,長年続けてきた習慣を変えることは容易なことではない.1型糖尿病患者であれば,毎日のインスリン注射や血糖自己測定,また食事とインスリン量の調整方法を学び,低血糖や高血糖を予防しながら血糖コントロールを行っていかなければならない.これまでの生活にあらたに糖尿病治療を取り入れ,日々の自己管理や意思決定を行っていくことが求められる.これにより,これまでには経験しなかった多くのストレッサーが生じ,さまざまなストレス反応をもたらすと考えられる.しかも糖尿病に関連した出来事だけでなく,生活のあらゆる場面で遭遇するストレッサーに対処していかなければならない(Box 1).とくにライフイベントはしばしば糖尿病の自己管理や血糖コントロールに影響を及ぼす.それゆえ,日々の生活で生じる一般的なストレスや糖尿病あるいは治療に関連したストレスに対して適切なコーピングを行うことはセルフケア行動を継続して血糖コントロールを維持するために大変重要である.米国糖尿病教育者協会(AADE:American Association of Diabetes Educators)は「the AADE 7 Self-Care Behaviors(AADE7つの糖尿病自己管理行動)」を提唱し,その一つにHealthy Coping(適切なコーピング:Tips 1)をあげている(Box 2).
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