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特集 患者満足度を高める糖尿病診療
第1部 外来で患者満足度を高める
こんな患者を診るとき
肝障害を伴う糖尿病の血糖コントロール
How to interpret blood glucose change in diabetic patients with liver dysfunction
三浦 順之助
1
1東京女子医科大学糖尿病センター
キーワード:
肝硬変
,
慢性肝疾患
,
NASH
,
インスリン治療
,
低血糖
Keyword:
肝硬変
,
慢性肝疾患
,
NASH
,
インスリン治療
,
低血糖
pp.228-229
発行日 2005年2月15日
Published Date 2005/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415100675
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- Abstract 文献概要
肝機能障害時の血糖変動を考える
肝機能障害時の血糖値変動の特徴を理解して血糖コントロールを行う.
外来指導の実際
肝機能障害,特に肝硬変に近い症例でみられる耐糖能異常の基本的な病態は,空腹時血糖は正常値あるいは正常値に近いが,糖負荷後に高血糖がみられることです.正常肝では空腹時にはインスリンとグルカゴンなどによりグリコーゲンの分解や,糖新生により血糖を維持し,糖負荷後は糖輸送担体により糖の取り込み処理をしています.糖負荷後の糖取り込みの程度は肝細胞膜内外の糖濃度差およびグルコキナーゼ活性により規定されています.そのため肝実質細胞の減少に伴うグリコーゲンの蓄積減少,糖新生能の低下,グルコキナーゼ活性の低下により,負荷後高血糖が特徴になります.また空腹時血糖値が正常にもかかわらず,高インスリン血症を認めます.これは糖負荷後の糖処理能の低下とともに,インスリンによる肝での糖の取り込みも低下するので,インスリン抵抗性を呈すると考えられています.以上の病態は,程度の差はあれ慢性肝疾患でも認められます1).
次に肝障害合併糖尿病か肝障害による糖代謝異常かの鑑別ですが,前者では空腹時血糖が比較的高いこと,インスリン値が低めであることで,ある程度鑑別ができます.もちろん病歴も大切です.実際ははっきりと鑑別できないことが多いですが,臨床的には大きな問題になることはありません.肝硬変では肝不全のリスクが高くなる,高度脂肪肝から肝線維化助長による肝硬変の進行もあるので,血糖コントロールは肝疾患側からみても大切です.
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