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Case
糖尿病診断時に第4期(腎不全期)の糖尿病性腎症を認めた症例
59歳男性,会社員.
現病歴:約10年前に尿糖陽性を指摘されるも自覚症状ないため放置.2年前に視力低下を主訴に近くの眼科医に受診,増殖性網膜症を指摘されて光凝固療法を開始した.内科的治療を勧められて近医受診.「高血圧と軽い腎機能障害はあるが糖尿病のコントロールは良好」と説明されて格別な療養指導なくグリミクロン 20 mg分1朝と降圧剤処方にて通院していた.2週間前から下肢の浮腫を自覚,体重もそれまでの65 kgから68 kgに増加したため当院内科受診.利尿剤追加投与にて浮腫は軽減したが精査加療目的で糖尿病外来に紹介受診となる.前医では検尿検査を施行していなかった.
身体所見:身長167 cm,体重65 kg(標準体重:61.4 kg,BMI 23.3,20歳時体重60 kg,最大体重72 kg:50歳頃),血圧156/86 mmHg,脈拍72/分整,胸腹部に特記すべき異常所見なし,下腿に圧痕を残す浮腫あり.膝蓋腱反射,アキレス腱反射は左右とも消失.
検査所見: RBC 299万/mm3,Hb 9.0 g/dL,Ht 25.0%の正球性正色素性貧血.尿蛋白(2+),尿糖(-),尿潜血(2+), 尿沈渣にて硝子円柱・顆粒円柱:1-4/全視野.TP 6.1g/dL,Alb 4.0g/dL,BUN 40.6mg/dL,Cre2.3mg/dL,UA 7.9mg/dL,Na 142mmol/L,K 4.2mmol/L,Cl 106mmol/L,T-Chol 222mg/dL,TG162mg/dL,HDL-Chol 32 mg/dL.朝食後血糖 96 mg/dL,HbA1C 6.1%,
眼底検査:福田BI+M(光凝固療法中)の結果を得たため,精査目的で入院.
神経伝導速度検査:下肢で遅延,頸動脈エコーで内膜中膜肥厚あり,プラークなし.
頭部MRI/MRA:異常所見なし.心電図:左室肥大,安静時CVR-R 0.88%,心エコー:壁運動正常,トレッドミル・テスト:陰性.腹部エコー:腫瘍性病変認めず,腎動脈狭窄の所見なし,両腎のサイズは正常で左右差なし.1日尿蛋白定量:1.2 g/日,24時間クレアチニン・クリアランス:31.8 mL/min,尿中NAG 20.0 U/L,尿中βMG 25μg/L以下,IgA 260 mg/dL,エリスロポエチン 32.3 mIU/L.
以上より糖尿病性腎症第4期および腎性貧血と診断し,降圧剤の処方変更,エスポ6,000単位週1回皮下注射.1,600 kcal,蛋白40 g,塩分6 g以下にて食事指導を行い,血圧は120/70 mmHg程度にコントロールされたため外来通院とした.現在の血圧は102/56 mmHg,腎機能はBUN 23.8 mg/dL,Cre 1.9 mg/dLにて安定している.
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