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1990年代以降EBM(Evidence-based Medicine)の考え方が普及し多くのエビデンスに基づいた診療ガイドラインが作成されてきました.そして今や評価の段階に入りつつあります.聖路加国際病院はこのたび病院における医療の質を表す指標(Quality Indicator)をまとめました.院長の福井次矢先生にその経緯とこれからの抱負を伺います.
アメリカ留学で臨床疫学に出会う
𠮷岡 福井先生は,1976年に京都大学を卒業後,聖路加国際病院で臨床研修をされ,その後アメリカに留学されました(Box 1).先生が臨床疫学や,EBMを専門にされていこうと思ったきっかけはどういうことだったのでしょうか.先生のご専門は循環器でしたよね.
福井 はい.アメリカから帰ってきてからも循環器をやっていたのですが,診療と臨床研究に,いまでいうEBMと臨床疫学が非常に重要だということは常に考えていました.
アメリカでクリニカルフェローシップをやっていた頃の同僚が,肩書きに,“MD,MPH(Master of Public Health)”を書いていたので,「この人たちはどういうバックグランドを持っているのだろう?」と思いました.MPHって,いまは笑い話ですけど,Miles Per Hourの略じゃないですよね,と思ったくらい,ぜんぜん知らなかったのです.
Master of Public Healthだということで,ちょうど私が行っている頃には,一般内科のグループが臨床研究をやるためには,疫学と統計学をきっちり学ぶ必要があると考えられるようになっていました.われわれの年代――当時30歳前後だった人たち――の多くの者が,School of Public HealthでMPHのコースで勉強をしているということを知ったのです.そして,MPHをもっている人たちは,私が日本で会ったことのないタイプの臨床医であり,しかも,興味深い臨床研究をやっていることに非常に驚きました.それで,アメリカでMPHコースできっちり勉強して日本へ帰ろうと思ったのです.
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