JIM臨床画像コレクション
急性偽性腸閉塞症
木村 琢磨
1
,
青木 誠
1
1国立病院東京医療センター総合診療科
pp.1086
発行日 2002年11月15日
Published Date 2002/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903671
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症例は23歳の男性.仕事中に腹痛が出現し,当院救急外来を受診した.嘔気・嘔吐はない.来院時,バイタルサインは安定していたが,顔面は苦悶状であった.身体所見上,腹部膨満と下腹部圧痛を認めたが,筋性防御や反跳痛を認めず,腸音は低下していた.腹部単純X線では著明な結腸ガス(表紙写真)を認め,血液検査でCK値の上昇やアシドーシスはなかった.S状結腸軸捻転などの絞扼性イレウスを疑い,ガストログラフィンで注腸造影を行ったが,明らかな閉塞を認めなかった.急性偽性腸閉塞症を疑い,絶食,輸液,胃管挿入による減圧を行ったところ,腹痛は軽快し,第3病日には腹部単純X線もほぼ正常となった.
急性偽性腸閉塞症(acute pseudo obstruction)は,腸管に明らかな器質的・機械的閉塞病変はないが,大腸の閉塞症状を呈する症候群であり,Ogilvie症候群ともいわれる.急激に腸内容の輸送が障害され,嘔気・嘔吐,腹痛など器質的な下部腸閉塞と類似した症状を呈する.多くは基礎疾患を有し,通常は手術後,感染症,心疾患,神経疾患,外傷などに合併するといわれるが,約6%は明らかな誘因なしに生ずるとされ,本症例でも原因は不明であった.
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