日常診療のOne Point Advice
高γグロブリン血症および抗核抗体陽性を呈し,ネフローゼ症候群が先行した胃癌の1例
小川 真
1
,
上田 志郎
1
1千葉大学第1内科
pp.432
発行日 1997年5月15日
Published Date 1997/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902163
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図1に示すのはネフローゼ症候群(NS)を合併した66歳胃癌患者の初診時および手術後の血清蛋白電気泳動所見である.初診時にγ,α1,α2分画の上昇がみられるが,手術後は正常パターンとなった,患者は下腿浮腫を主訴に来院.蛋白尿7g/日,血清アルブミン2.2g/dlとNS状態であり腎生検で膜性腎症と判明した.lgGは3,385mg/dl免疫電気泳動でもM蛋白は陰性であった.抗核抗体は陽性(×320,speckled)だが,抗DNA抗体は陰性,補体レベルも正常で,口唇生検では唾液腺に著変がなくSjögren症候群も否定的であった.入院直前に近医にて受けた胃・十二指腸造影検査では慢性胃炎と診断されていた.
プレドニソロン30mg/日が奏効し3カ月後にはアルブミンは2.8g/dl,尿蛋白も1g/日前後になった.しかし治療開始8カ月後に再び尿蛋白が増悪し,心窩部不快感も出現.上部消化管内視鏡検査で胃前庭部にもBorrmann2型の胃癌が認められた.外科転科のうえ,胃全摘所属リンパ節郭清術が行われたが,幸い他臓器転移はなく,蛋白尿は術後3カ月で正常化し,抗核抗体も陰性化し,ステロイドは中止できた.
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