メンタルクリニック便り・19
いまどきの「うつ」の背景
市村 公一
1
1あおばメンタルクリニック
pp.70
発行日 2014年1月15日
Published Date 2014/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414103095
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■改めて「自己愛性パーソナリティ障害」
今どきの「うつ」の男性では,仕事ぶりに対する周囲と自分自身の評価に大きなズレがみられる.周囲はそこそこ評価しているのに,自分では全然ダメだと思い込んでいる.その背景には,万能感と自信に溢れて得意満面な自分と,劣等感に苛まれ,いつか惨めな目に遭うのではないかと戦々恐々としている臆病な自分の両極端な自己イメージしかなく「等身大の自分」がない,自己愛性パーソナリティ障害に通じる性格傾向がある,というのが前回までのお話でした.ここで改めて自己愛性パーソナリティ障害とはどんな病気なのか,確認しておきましょう.例によってDSM-Ⅳによれば,
①自己の重要性に関する誇大な感覚
②限りない成功,権力,才気,美しさ,あるいは理想的な愛の空想へのとらわれ
③自分が“特別”であり,独特であり,他の特別なまたは地位の高い人達にしか理解されない,または関係があるべきだ,と信じている
④過剰な賞賛を求める
⑤特権意識,つまり,特別有利な取り計らい,または自分の期待に自動的に従うことを理由なく期待する
⑥対人関係で相手を不当に利用する
⑦共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない,またはそれに気づこうとしない
⑧しばしば他人に嫉妬する,または他人が自分に嫉妬していると思い込む
⑨尊大で傲慢な行動,または態度
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