メンタルクリニック便り・14
いまどきの「うつ」の背景
市村 公一
1
1あおばメンタルクリニック
pp.713
発行日 2013年8月15日
Published Date 2013/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102946
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前々回と前回,今どきの「うつ」の女性に対する薬物療法についてお話ししてきました.ただ,薬はあくまで補助的なもので,「頑張らなくていい」「ほどほどにすることを覚えよう」といった精神療法のほうが重要です.
たとえば患者が「薬の効きが悪くなったのか,最近寝ても何度か目が覚めてしまう」と訴えた場合,すぐに薬を変えたり増やしたりでなく,まず「何か心当たりはありませんか?」と確認してください.「主人が会社を辞めると言い出した」とか「子どもが塾をさぼって勉強しなくなった」とか,何かしら新たなストレス因のあることがほとんどです.こうした場合,「薬の効きは同じです.ただ,寝るためにはリラックスしていることが必要です.でも,日中イライラしたり,不安で緊張が強ければ,床についてもリラックスできません.今の薬はこの不安や緊張を和らげて寝やすくしているのですが,あなたの緊張が強くなってしまったので,それで効きが悪くなったように感じるのです.寝る前にすこしゆっくりお風呂に入るなり,薄暗い部屋でしばらくボーッとするなりして,それから薬を飲んで寝るようにしてみてください」といった対応で以前のように寝られることもあります.また「お子さんは中学生.反抗期の真っただ中ですよね.お子さんはお子さんなりに子どもから大人へ脱皮しようともがいているんです.それに反抗するのは親に安心感,信頼感があればこそです.『私を信頼しているから,ああやって反抗しているんだ』と思って,暖かく見守ってあげてください」と話してあげれば落ち着くこともあります.
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