特集 腹痛診療の達人になる
【各論】
心血管疾患で見逃されやすい「腹痛」
城下 晃子
1
1慶應義塾大学医学部 救急医学
キーワード:
腹痛
,
心血管疾患
,
急性冠症候群
,
急性大動脈解離
,
腸間膜動脈閉塞症
Keyword:
腹痛
,
心血管疾患
,
急性冠症候群
,
急性大動脈解離
,
腸間膜動脈閉塞症
pp.180-182
発行日 2010年3月15日
Published Date 2010/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101869
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Case
突然発症の腹痛を主訴とした急性大動脈解離の一例
症例:65歳,男性.
既往歴:尿路結石(保存的治療にて軽快).
現病歴:某月某日,職場でデスクワークをしていたところ,突然,臍周囲の腹痛が出現した.その後,痛みの部位は腰背部に移動し,鈍重な痛みが軽減することなく持続したため,当院に救急搬送された.当院来院時,意識は清明で,上下肢の血圧に左右差を認めず,その他の身体所見にも異常を認めなかった.尿潜血は陰性で,血液・凝固・生化学検査,心電図,胸部X線にて特記すべき所見を認めなかった.突然発症の腹痛であり,腹部から腰背部にかけての鈍痛が持続し軽快しないため,大動脈解離を念頭に置き,胸腹部単純・造影CTを施行した.CT上,腎動脈分岐部から左総腸骨動脈分岐部にかけて血栓形成を伴う偽腔を認め(図1),偽腔閉塞型大動脈解離(Stanford分類B型)と診断した.血管外科にコンサルトのうえ,臓器虚血症状もなく,血行動態も安定しているため,十分な鎮痛薬投与と塩酸ジルチアゼム持続投与による降圧にて保存的に加療する方針となった.
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