シネマ解題 映画は楽しい考える糧[20]
「それでもボクはやってない」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.157
発行日 2009年2月15日
Published Date 2009/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101630
- 有料閲覧
- 文献概要
冤罪をテーマに裁判制度をリアルに描く
実は,日本映画を観るのはあまり得意ではありません.とくに現代を舞台にしたものは苦手です.お金を払って異世界に遊ぶ,つまり現実の「疲れ」を取りリフレッシュするために映画館に入る私にとって,日本の今を舞台にとても身近な問題を扱った作品を観るのはつらい体験なのです.本作DVDを購入してからも数カ月の間,「候補作」としてずっと棚に陳列したまま,なかなかソフトをプレーヤーに入れる踏ん切りがつかないでいました.
しかし本コラムの第20回目は,自分のなかのルールで日本映画にしなくてはいけないのです.しばらくはわが国の裁判の「実情」を描いた本作と,現在の若年性アルツハイマー病患者とその妻の人生を描いた「明日の記憶」(堤幸彦監督,2006年)のどちらにしようか迷いに迷っていました.しかし「明日の記憶」も実につらい映画なのです.結局本作を選択しました.一大決心です.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.