シネマ解題 映画は楽しい考える糧[15]
「2999年異性への旅」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.801
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101516
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この関係,「患者と医師」に似ている?
荒唐無稽なストーリー,洒落た台詞,おかしな登場人物,そして最後にほろりと来る典型的アメリカン・コメディー.少しシリアスものが続いていたので,今回は楽しく笑える作品を取り上げます.宇宙の彼方に地球より1000年くらい進歩した文明がありました.その星には男しかおらず,クローン技術を使って繁殖していたために生殖器が退化・消滅しています.彼らは宇宙征服の欲望をもち,次なる標的が地球です.ハロルドという「地球名」を与えられた主人公は人工生殖器を装着し,地球の女性を妊娠させ子孫を増やすべく,米国に送り込まれたのでした.彼は多くの女性にところ構わず声をかけますが,ふられ続けます.やがてスーザンという女性に出会い結婚,めでたく妊娠,そして……あとは観てのお楽しみ.
ハロルドの星には女性が存在しないので,彼らは図書館で文献を読み,地球の女性の生態を徹底的に研究しました.そして「女性が生殖行為を受け入れるようにするためには,甘い言葉が有効です」「香水や靴を誉めましょう」,肝心なのは話を聞く態度を示すことだから「相槌を繰り返すと効果的です」「話の間に“a-ha”をいいましょう」などと学習するのです.たとえばハロルドがCG女性を相手に口説きのテクニックをトレーニングするシーンは傑作です.ハロルド「素敵な靴だ」,CG女性「ありがとう」,ハロルド「挿入していい?」,女性「イエス」,コンピューター「10秒です.ハロルド,自己記録更新です」.女性が観たらあきれ果てること請け合いのシーンですね.
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