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必ず出現する新型インフルエンザ
A型インフルエンザウイルスの表面には2種類の糖蛋白質が存在し,ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれている.抗原性の違いからHAは16種類(H1~H16),NAは9種類(N1~N9)の亜型に分かれる.感染の初期に機能するのはHAであり,新型インフルエンザの出現を考えるのにHAは決定的に重要である.抗原性の変化に対し,HAの同一亜型内では交差免疫は成立するが,別の亜型間では成立しないためである.
現在流行しているA型インフルエンザウイルスはH1N1とH3N2であり,多くのヒトがこれらの亜型に免疫があるため,大きな流行が起こることはない.ところが,H1,H3以外の亜型が流行すると,ヒトは誰も免疫を有していないため世界的大流行(パンデミック)となる.これまで人類は何度もパンデミックを経験しており,これは新しい亜型が出現するたびに起こってきたと推測される.過去の歴史を振り返ると,10年から数十年の間隔でパンデミックは発生しており,いつか必ず新型インフルエンザによるパンデミックが起こるのは疑いがない1,2)(図1).1968年に香港かぜ(H3N2)が出現してから40年が経過し,もうそろそろ次のパンデミックが来ると考えても不思議でない.次の新型インフルエンザの亜型はH1とH3以外であることは間違いないが,それがどの亜型であるのかは誰も答えられない.これまでH2ではないかと考える専門家が多かったが,その後の経過から,H5,H7,H9あたりも可能性があると考えている.とくに,H5N1の高病原性鳥インフルエンザは,鳥の世界だけではなくヒトにも感染し,次の新型インフルエンザの有力な候補となっている.
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